健康の「素朴な疑問」

膝を曲げるとポキポキなるのはなぜ? 関節症につながるリスクも

階段を上ると「ポキポキ」と…(C)PIXTA
階段を上ると「ポキポキ」と…(C)PIXTA

【Q】立ち上がったり、階段を上ったりすると、膝がポキポキ鳴ります。病気でしょうか。変形性膝関節症の前触れとも聞きますが、本当ですか?

【A】音が鳴る仕組みはハッキリとわかっていませんが、「キャビテーション」と呼ばれる現象が起きているからではないか、といわれています。これは空洞現象ともいわれ、液体の流れの中で圧力差により短時間で泡の発生と消滅が起きる物理現象を言います。

 そもそも膝関節は、太ももの太い骨と脛の骨、膝のお皿の骨が組み合わさってできています。立ったり座ったりすると、そこに大きな負担がかかります。膝関節はそれを覆っている関節包と呼ばれる袋の中に関節腔という空間があり、その中は関節液と呼ばれる粘性の体液で満たされています。そのおかげで、膝を曲げても、太ももの太い骨や脛の骨が直接ぶつかって、その間にある半月板が変形したり、弾力性を失ったり、すり減ったりしないようになっています。

 膝を曲げるとポキポキ音が鳴る人は関節液が圧力を受けて、関節包の中の空気が気泡を生み、その気泡がはじける音がポキポキとした音として聞こえるのではないか、というのです。

 むろん、たまに音が鳴るという人は気にする必要はありません。しかし、いままでそんな音はしなかったのに、最近急に鳴り出した、どんどんその頻度が増えている、音が大きくなっているという場合は心配です。速やかに整形外科の先生に診ていただきましょう。

 というのも、膝のポキポキ音は変形性膝関節症の発症リスクを高めるとの研究結果が存在するからです。研究したのは米国のベイラー医科大学などの研究チームで、2017年に公開されています。研究は膝のポキポキ音と変形性膝関節症の発症との関連を検討した研究です。

 研究の対象となったのは変形性膝関節症の症状のない3495人(平均年齢は61.1歳、平均の体格指数=BMI28.2)。結果は、膝のポキポキ音がまったくない人に対し、まれにある人では1.5倍、時々の人で1.8倍、頻繁にある人で2.2倍、いつもある人では3.0倍も変形性膝関節症の発症リスクが高かったそうです。

 変形性膝関節症は、足の筋肉が弱っている人、太っている人などに発症しやすく、発症すると歩くことが苦痛になることから日常活動が低下して糖尿病や高血圧などの生活習慣病を発症するリスクが高まります。そうならないために、膝回りや足の筋肉を鍛えたり、体重を落とすことが大切になります。

 ただし、我流の運動はむしろ膝や足に負担をかけて状態を悪化させることにもなりかねません。運動のやり方も病院などの理学療法士に尋ねるようにしましょう。

(弘邦医院・林雅之院長)

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