高齢者の正しいクスリとの付き合い方

血をサラサラにする薬を使っている人は歯の治療の際に必ず伝える

歯科を受診するときも忘れずに伝える

 高齢者の中には、「抗凝固薬」と呼ばれる血をサラサラにするクスリを使っている方もいらっしゃるかと思います。目的は、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、塞栓症の予防などさまざまですが、いずれにしても血管内に血の塊=血栓ができないようにして、そういった疾患を予防します。

 さて、これらのクスリを処方されたときには、「血が止まりにくくなるのでケガをしないように気をつけてください」といった説明を受けるはずです。あくまで個人的な意見ですが、この説明はあまり適切であるとはいえません。ケガは誰しも突然かつ意図せずにしてしまうものですし、気をつけようがないものといえるからです。もちろん、自分からケガのリスクが高い行動を積極的に選択することは問題ですが、そんな人はなかなかいないでしょう。

 そのため、私が説明するときにはこうお伝えするようにしています。

「こういったクスリは血が止まりにくくなっているだけで、決して血が止まらないわけではありません。ですから、出血を伴うようなケガをしたときでも慌てずにしっかり傷口を圧迫してください。少し時間がかかるとは思いますが、必ず血は止まります。もし血が止まらないようであれば、病院に来てください。必ず止めますから。ケガをしないようにするのは難しいです。一番大事なのは出血したからといってパニックにならないことです」

1 / 2 ページ

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

関連記事