コロナ第7波に備える最新知識

感染症の専門家は「ゼロコロナは不可能」となぜ言わないのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 8月23日までの新型コロナの累計陽性者数は1749万7897人に上る。累計死者数は3万7586人である。年代別にみると、10歳未満15人、10代11人、20代52人、30代131人、40代454人、50代1208人、60代2473人、70代7298人、80代1万3935人、90代以上8850人となる。

 しかし、毎日報じられるのはこうした感染者や重症者、死者の数だけ。当初から指摘されてきた重症化リスクのある人が重症者や死者のなかにどれだけの割合を占めているかが伝わってこない。

 ちなみに新型コロナ感染症で重症化リスクが高いとされる人として、糖尿病の人、慢性の心臓病(心不全、狭心症、心筋梗塞など)がある人、慢性の呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の人、透析を受けている人、抗がん剤や免疫抑制剤による治療を受けている人、妊娠中の人、65歳以上の人、喫煙している人、肥満(BMI30以上)の人などが挙げられてきた。

 なぜ、重症化リスク別の重症化率や死亡率といったデータをガラス張りにしないのか? それは、日本でこれだけの犠牲者を出し、膨大な予算と人手をかけていながら、国民一人一人が実施できる感染予防に役立つ具体的な情報収集をしていないからではないか。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師が言う。

「私の患者さんで75歳以上、コントロール不良の糖尿病、家族の反対でワクチン未接種の人が新型コロナウイルスに感染しました。しかし、重症化リスクが非常に高いことから、仕事場や日常生活の中での感染予防策を繰り返し伝えたからかはわかりませんが、症状は倦怠感のみで、発熱することも後遺症が残ることもなく軽快されました。新型コロナウイルス感染症発生届にはワクチン接種の回数や重症化のリスク要因となる疾病の有無などを記載する項目があります。情報は収集していますが、それがどこまで分析され、対策に活用されているかはわかりません。驚くのは感染経路に関する記載が令和4年6月30日から求められなくなった点です。以前は飛沫・飛沫核感染、接触感染、その他の項目でした。オミクロン株の主たる感染経路とされているエアロゾル感染、飛沫が落下付着した料理を食べたことでの感染、キスでの感染、実際にあったことですがペットボトルの回し飲みで高校の部活でクラスターが発生した事例などは届け出医が記載する必要があります。しかし、そこまで書く時間はないのでそのあたりの届け出書の改正が必要と考えていました。ところが今回の改正で感染経路を聞く必要がなくなったことで、これでは、どのようにして感染したかがわからず、次なる感染に備えた具体的な感染予防対策の指導もできないことになります。そもそもこれまでも収集した情報を感染予防に役立てる気がなかったのではないか、と疑ってしまいます」

 背景には、政府も感染症の専門家もゼロコロナを求める国民の声に真正面から向き合えないからではないのか。

「現段階で重症化リスクを下げるワクチンも、一定程度効果が期待できる治療薬も使える状況になっており、亡くなるリスクを一定程度減らせるまでになっていますがゼロにはできません。そのことは一般の人もわかっているはずです。だからこそいまの科学でできることはどこまでかを知らせることが重要です。今後さらに大事になるのが、一人一人に実践してもらいたい感染予防対策を、より具体的に、繰り返し伝え続けることではないでしょうか」

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