コロナ第7波に備える最新知識

感染症の専門家は「ゼロコロナは不可能」となぜ言わないのか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 なぜ、重症化リスク別の重症化率や死亡率といったデータをガラス張りにしないのか? それは、日本でこれだけの犠牲者を出し、膨大な予算と人手をかけていながら、国民一人一人が実施できる感染予防に役立つ具体的な情報収集をしていないからではないか。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師が言う。

「私の患者さんで75歳以上、コントロール不良の糖尿病、家族の反対でワクチン未接種の人が新型コロナウイルスに感染しました。しかし、重症化リスクが非常に高いことから、仕事場や日常生活の中での感染予防策を繰り返し伝えたからかはわかりませんが、症状は倦怠感のみで、発熱することも後遺症が残ることもなく軽快されました。新型コロナウイルス感染症発生届にはワクチン接種の回数や重症化のリスク要因となる疾病の有無などを記載する項目があります。情報は収集していますが、それがどこまで分析され、対策に活用されているかはわかりません。驚くのは感染経路に関する記載が令和4年6月30日から求められなくなった点です。以前は飛沫・飛沫核感染、接触感染、その他の項目でした。オミクロン株の主たる感染経路とされているエアロゾル感染、飛沫が落下付着した料理を食べたことでの感染、キスでの感染、実際にあったことですがペットボトルの回し飲みで高校の部活でクラスターが発生した事例などは届け出医が記載する必要があります。しかし、そこまで書く時間はないのでそのあたりの届け出書の改正が必要と考えていました。ところが今回の改正で感染経路を聞く必要がなくなったことで、これでは、どのようにして感染したかがわからず、次なる感染に備えた具体的な感染予防対策の指導もできないことになります。そもそもこれまでも収集した情報を感染予防に役立てる気がなかったのではないか、と疑ってしまいます」

2 / 3 ページ

関連記事