がんと向き合い生きていく

「霊水」ががんに効くとは思えないが…担当医に相談してほしい

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 もう50年も前になりますが、ハイキングで北海道の恵山に行ったことがあります。暑い中、長い道を歩いて行くと、岩間からきれいな清水が流れていました。飲めると聞いて、口にした時の冷たさ、おいしさに、思わず「生きた!」と叫んで、水筒の中の水を捨てて、清水をくんだことを思い出します。津軽の岩木山に登った時もそうでした。頂上近くなった道脇の真清水は、冷たく、おいしく、命が救われるような思いでした。

 この夏は青森のねぶた祭が開催されました。ねぶたの周りで踊る跳人は「ががしこ」というブリキで作った器を腰に着けています。水やお酒を飲む、コップの役目をします。長く跳ねて、渇いた喉、そしてこのががしこで飲んだ水がおいしかったことも忘れません。

「水」というと、思い出すのがKさん(50歳・女性)です。乳がん手術の後、骨転移に対する放射線治療のために通院されていました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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