60歳からの健康術

性感染症編(9)高齢者は性行為なしでも性器ヘルペスを発症する場合がある

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 病気は治療すれば必ず治ると思い込んでいる人がいる。しかし、治療しても体のどこかに病原体が潜み、加齢で免疫が低下すれば再発する病気もある。そのひとつが性感染症である性器ヘルペスだ。「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で日本性感染症学会の功労会員でもある「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長に聞いた。

「性器ヘルペスは主に性的接触により単純ヘルペスウイルスが感染する性感染症のひとつです。性交後2~10日後に男性なら陰茎の亀頭、包皮など、女性は外陰部や子宮頚部などにかゆみや違和感をともなった直径1~2ミリの程度の水ぶくれや赤いただれが複数できます」

 人によってはかゆみ、発熱、リンパ節の腫れなどの症状を伴う場合がある。水ぶくれは破れてびらんや潰瘍になる。

「ヘルペスウイルスは9種類発見されていて、性器ヘルペスの原因となるのは単純ヘルペスウイルス(HSV)です。このウイルスは2種類あり、1型は唇や目、手指など上半身に感染することが多い。一方、2型は性器や肛門周辺にできることが多い。ただし、そのすみ分けは厳密ではなく、唇や目などから性器ヘルペスが発見されることも少なくありません」

 注意したいのは体に水ぶくれをつくるヘルペスはHSVだけではないこと。水痘や帯状疱疹ウイルス(VZV)も体に水ぶくれをつくる。また、HSVとVZVは水ぶくれ症状は同じで、一度感染すると体内の神経節にすみつき、感染者は一生付き合っていかなければならないのも同じだ。

「ただし、HSV2型は先述したように性器や肛門周囲に症状が出るのに対して、VZVは胸や背中、顔面、頭部に症状が出ます」

■ストレスが引き金に

 問題は、性器ヘルペスは他のヘルペス同様に再発が多いこと。薬で治ったと思っていても、疲れやストレスにより、神経節に潜んでいたウイルスが暴れだし、再発する。

「性器ヘルペスの80%は再発例であり、初めての感染事例は20%に過ぎないという話もあります。だからこそ、年々基礎代謝や免疫能力が落ちる高齢者は注意が必要です」

 なお、性器ヘルペスは感染してすぐに発症するわけではなく、無症状でウイルスを排出している不顕性感染が70%くらいいると言われ、本人が気づかないうちに他人にうつしてしまうこともある。気になる人は恥ずかしがらずに性感染症の専門医に相談することだ。

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