糖尿病の人は歯の喪失リスクが高…「歯を守るためのポイント」

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「歯周病は、口腔内に生息する歯周病菌が原因で起こります。歯周病菌が歯と歯肉の隙間=歯周ポケットに蓄積して増殖すると、歯肉が炎症を起こして腫れたり出血しやすくなり、進行すると歯周ポケットが深くなって歯を支える歯槽骨が溶け、歯が抜けてしまうのです。歯周病菌は内毒素を放出するため、歯肉などの歯周組織や粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。そのため、TNF-αなどの炎症性サイトカインも増えるのです」

■血糖をコントロールしたうえで歯周病の治療を行う

 つまり、糖尿病と歯周病が合併している人は、両方ともきちんと治療して炎症性サイトカインを減らさなければ、どちらも十分な改善は望めないということになる。

「糖尿病で歯を失わないようにするには、治療で血糖コントロールを適切に行ったうえで、定期的な口腔ケアを続ける必要があります。当院では歯科治療の前に血糖の指標であるHbA1cの数値を確認し、あまりにも血糖コントロールが悪い人は治療を見合わせるケースもあります。高血糖の人は感染症になりやすいため、抜歯や歯石除去、インプラントなどの外科的な治療による感染リスクが高いのです。歯周病を改善するには、正しいブラッシング指導と、歯の表面や歯周ポケットの中に付着している歯石やバイオフィルム(微生物の集合体)を特殊な器具で取り除く『歯周基本治療』が欠かせません。ですから、糖尿病と歯周病がある場合、歯周病の治療を行う前に、まずは血糖をコントロールする必要があるのです」

 歯の喪失はQOL(生活の質)を低下させ、糖尿病と歯周病だけでなく、認知症やがんといったほかの病気につながるリスクもアップさせる。糖尿病の人は「歯の健康」も十分に意識したい。

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