60歳からの健康術

性感染症編(10)60代以上が梅毒から身を守るために気をつけるべきこと

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 梅毒の感染拡大が止まらない。国立感染症研究所が発表した感染症発生動向調査2022年第35週(8月29日~9月4日)によると、梅毒の全国の新規感染者数は190人。東京49人、大阪26人が目立つ。今年の累計では8155人となり、1万人を超えるのは確実な情勢で、累計患者数が多い都道府県は東京2343人、大阪1091人、愛知463人、福岡332人、神奈川327人、北海道324人である。60代は梅毒から身を守るために何をしたらいいのか? 「性感染症プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で日本性感染症学会の功労会員でもある「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長に聞いた。

「大事なことは梅毒は高齢者の世代である自分には関係ないと思わないことです。20代の梅毒感染が急増する一方で、60代以上の感染者数も激増しているのです」

 実際、東京都感染症情報センター発表の年齢階級別患者報告数の推移(2006~2021年)でみると、2006年の20代、60代以上の患者数は17人、4人だった。それが2021年にはそれぞれ425人(25倍)、70人(17.5倍)と急増している。

 なぜ、60歳以上の梅毒が増えているのか? 背景に「配偶者以外の異性と性的関係があっても家庭に迷惑がかからなければいい」という男女が増えているからではないか、と尾上医師は言う。

「女性は60歳くらいになると性交痛などにより夫婦の間の性交を嫌がる傾向にあります。しかし、男性の方はまだまだ元気。いきおい、家庭外に性交を求めることになります。60代の複数の患者さんも、妻も自分が浮気をしているのはわかっているが夫の相手になってあげられないのだから仕方がない、と暗黙の了解をしていると言います。その結果、外で梅毒に感染した夫が妻にうつしてしまうことも少なくありません」

 2つ目は、60代以上は男女とも正しい性知識が他の世代に比べて乏しいことを自覚することだと言う。

「たとえば、梅毒は性交さえしなければ大丈夫と思い込んでいる男性の高齢者は少なくありません。クラミジアが咽頭に感染することは知っていても、梅毒も同じだと思わない人は多いのです。しかし、これは間違いです。梅毒は咽頭にも感染します。ですから、性交はしなくてもオーラルセックスをすると梅毒に感染するリスクは高くなります」

 また、「妻は閉経しているから妊娠の心配はない。だからコンドームは必要ない」というのも間違い。

「コンドームには避妊以外に性感染症の予防という役割があります。高齢者であっても性交する場合は必ずコンドームを着けることです」

 あなたは大丈夫?

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