上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

最新の8K内視鏡は安全性を高めて手術の完成度を向上させる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 また、モニターだけで患部の超高精細な画像を確認できて、処置している箇所を自分でのぞきこまなくても済むので、一定の姿勢で手術を進めることができます。姿勢の変化が少ない分、手術そのものが楽になる印象です。

■わずかな「ズレ」が課題

 ただ、8K内視鏡にはいくつか課題があるのも事実です。まずは、画像処理にわずかな遅延が生じることです。体内に挿入したカメラで撮影した画像データは、外部のモニターに転送されます。その際、画像が構築されるまでの時間にほんの少しだけズレがあるのです。

 実際に操作している感覚と、目にする映像の間に約0.03秒を超える遅延があると、われわれの脳は「なんかズレているぞ」と認識するといわれています。8K画像はデータ量が非常に大きいので、転送して構築されるまでにはどうしても時間がかかります。内視鏡手術では、オンタイムで体内の映像をモニターに映しながら処置していくので、ズレがあるとリスクが生じます。ですから、撮影されたデータを転送して画像を正確に構築するまでの時間をどれだけ早めることができるかが非常に重要です。8K内視鏡でもそうしたズレを限りなく小さくして、オンタイムで画像を転送できるようになれば、より使いやすくなるでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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