上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

最新の8K内視鏡は安全性を高めて手術の完成度を向上させる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 また、8K内視鏡で得られた画像データを外部の記憶媒体に保存する場合、ものすごく大きな容量が必要になります。そのため、できる限り画質を落とさないように圧縮するエンコーダーといわれるソフトをより向上させたタイプの開発が求められます。

 さらに、8K内視鏡は手元のカメラ本体がまだ大きく重いので、小型化が望まれます。開発当初の2002年ごろは80キロだったカメラ本体は、それから5キロ、2.5キロと小型化・軽量化が進み、いまはパソコンを操作するマウス程度の大きさで、重さは370グラムほどまで軽量化されていますが、より操作性を向上させるにはさらなる小型化・軽量化が必要です。

 21世紀における医療の進歩はブラウン管時代から高度に進化した映像の支援が支えてきました。今や高精細かつ高速度転送を備えた8K映像支援技術は人間の扱う最高領域を確立したと言えるでしょう。つまり内視鏡手術において、超高精細画像を得られる8K内視鏡は理想的な装置なのです。現時点の4Kから8Kへ移行していくことで、診断ではわずかな異常をAIが判定し、外科治療では危険領域への操作に早期警告を発するロボットや内視鏡支援の治療が発展していくでしょう。みなさんが医療機関を検索する際に8K医療というキーワードが当たり前になる日は近いと考えます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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