時間栄養学と旬の食材

【菱】食道・胃・子宮・乳がんの予防に効果 皮は血糖値の上昇を抑制

実のほかに皮の栄養価も注目されている

 菱(ひし)は水面に浮かぶ葉の形が菱形の植物で、主に実を食べます。菱の実は果肉部分で、柔らかい茎も野菜として食べることができます。果肉の形が特徴的で、ギョーザのようないびつなハート形をしています。コウモリのような形にも見えることから、「bat nuts」と呼ばれることも。忍者が追っ手を防ぐためにまいたマキビシは、この実をかたどったものともいわれています。

 およそ8月ごろから熟し始め、ちょうど今の季節に収穫の時期を迎えます。原産はヨーロッパですが、中国南部、ロシア、台湾などでも栽培されており、国内では福岡や佐賀が特産です。毎年、少しずつながら出荷量を伸ばしていて、通販などでも見かける機会が増えてきました。菱の実は茹でて食べる以外にも、皮をむいて煮物や炒め物にしたり、砂糖煮にして保存食にもされるほか、乾燥させて粉にした後、菱団子や菱餅にしてもおいしいです。

 ビタミンとミネラルの種類が豊富なほか、強力な抗酸化作用を持つβカロテンや、口内炎、口角炎、湿疹に効果的なリボフラビンといった生理活性作用成分も多く含まれていて、貴重な漢方の材料としても使われています。最近の研究によると、菱はがん細胞の変成や増殖を防ぐ効果があるといわれているそうです。中でも、食道がん、胃がん、子宮がん、乳腺がんなどの予防効果が高いことが報告されています。

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古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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