医者も知らない医学の新常識

糖尿病ではすい臓がんリスクが増加する 発症確率が5.7倍に

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病は、今では国民病と言っていいほど増加している病気です。その原因は遺伝や環境などさまざまですが、血糖を調節するホルモンであるインスリンは、すい臓から分泌されているので、すい臓の慢性的な炎症などがあると、それも糖尿病の原因となることがあります。すい臓の病気の中で一番怖いのはすい臓がんで、多くのがんの中でも予後が悪く、早期に発見されることも難しいといわれています。それでは、すい臓がんと糖尿病との間には、どのような関係があるのでしょうか?

 糖尿病ではすい臓がんになりやすい、ということは分かっていても、その詳細は不明でした。今年のランセットという一流の医学・公衆衛生の専門誌に、中国での統計データが掲載されています。

 それによると平均的な比率と比較して、糖尿病の患者さんではすい臓がんになる確率が50%以上高く、特に若い年齢で発症して、糖尿病の期間が長いほど、すい臓がんになりやすいことが分かりました。20歳から54歳の時に糖尿病になった人は、平均的な比率より5.7倍以上も、すい臓がんになりやすかったのです。また血糖値が悪いことも、すい臓がんのリスクを高くしていました。糖尿病では定期的にすい臓のチェックを行うことが、重要になってくるのかもしれません。特に糖尿病の期間が長く、血糖値が高い人は注意が必要なのです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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