認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

孫と中国を旅したいと一念発起 70代初めから中国語を勉強し始めた

写真はイメージ

 長くエースとして活躍したある元プロ野球選手は60代以降も毎日、腕立て伏せ500回、腹筋と背筋を1000回などのトレーニングを続けてきたそうです。それもあってか、引退後、30年が過ぎて70歳になってからも、始球式では現役時代を思わせるような速球を投げ込んでいました。

 筋肉は何もしなければ衰えていく。鍛え続ければ、何歳になっても、それに応じた結果が出る。

 脳についても同じです。体の筋肉が鍛えるごとに強く太くなるのと同様に、脳の神経も、代償機構とネットワークを働かせれば、機能を維持できます。神経細胞の老化を防ぐには、これが非常に大切。ただ、筋肉のように、腹筋だけ、背筋だけ、といった部分ごとに絞ったトレーニングはできないので、脳全体の機能を高める工夫が必要です。

 そのためのキーワードは「意欲」。何事にも貪欲に取り組もうという意欲こそ、脳の機能を維持する最大の秘訣です。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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