がんと向き合い生きていく

食べられる幸せに感謝しなければ…食道がんの知人と話して思ったこと

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 食道がんで入院されたDさん(63歳・男性)を見舞いに行きたいと思ったのですが、コロナ流行の影響で面会は出来ないと聞き、スマホとパソコンを利用したWEB面会をしました。

 Dさんは放射線治療と抗がん剤治療を受けており、1カ月間ほとんど食事が取れず、高カロリーの輸液を点滴する中心静脈栄養を行っていました。

 WEBの画面上で、Dさんは「いままで一番おいしかったと思うのは、すりおろしのわさびを付けたマグロの刺し身だった。これに日本酒があれば最高。あなたは何が一番おいしかったか、教えてよ」と、笑いながら話されました。私は「うーん、マグロもいいね。次回、何がおいしかったか教えるよ」と答えました。

 私はその晩、床に入ってからこれまで食べた物を思い出してみました。

 小さい頃は海から遠い所に住んでいて、今のように流通が良くなかったように思います。祖母は干したエイを砂糖と醤油で煮てくれました。また、キリイカを買ってきて佃煮にしてよく食べました。イカの塩辛というのもありましたが、私はこれは嫌いでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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