医者も知らない医学の新常識

認知症は「食事」では予防できない? スウェーデンでの長期大規模研究の報告

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 認知症の増加は社会全体が取り組むべき深刻な健康問題です。今のところ進行を遅らせる薬はあっても、認知症そのものを治すような治療法は開発されていません。そうなると、重要なのは認知症の予防です。

 認知症は生活習慣と関わりがあるという考え方があり、運動習慣や食事内容の改善が、その予防に一定の効果があったとする報告もあります。ただ、その多くは対象の人数が限られていたり、経過を観察する期間が短かったりして、信頼のおける結果とは言えないものなのです。

 今年の神経医学の専門誌に、スウェーデンにおける大規模な臨床データが発表されています。2.8万人を超える、認知症のない一般住民を対象として、詳細な食事内容の調査を実施。その後の経過を20年以上にわたって観察したという、非常に大規模で長期間の臨床研究です。現在、世界的に推奨されている、食物繊維や魚を多く取り、赤身の肉や加工肉を減らした食事を厳しく守っている人と、そうした注意を食事にまったくはらっていない人とを比較したところ、意外なことに認知症の起こるリスクには、はっきりとした差は見られませんでした。

 もちろんこうした健康食には、動脈硬化の病気の予防効果などは確立されているので、その効果が否定されたわけではないのですが、認知症の予防というのは、そう簡単なものではないようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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