しかし手軽という点では、なんといっても「靴」が一番でしょう。変形性膝関節症は靴選びである程度予防でき、痛みを緩和する効果もあることが、経験的によく知られています。とくに今世紀に入ってから、科学のメスが入って、論文数が急増しています。ただし靴の形、サイズ、底やインソール(中敷き)の厚みや硬さ、履き方や歩き方など、パラメーターが多いため、複雑すぎてなかなか決定打が出ない状況です。
それでも参考になりそうな論文もいくつかあります。たとえば2021年にオーストラリアの研究グループが発表したものは、フラットで柔らかい靴と、安定したサポート力のある靴で、どちらが膝痛に効果があるかを調べたものです。平均年齢65歳の164人の男女を2組に分け、それぞれの靴を半年間履いて生活してもらって、膝の痛みがどうなったかを判定するというものでした。
その結果、安定した靴を履いていた人のほうが、膝の痛みが軽減する割合が高かったといいます(約60%)。さらに安定した靴を履いていた人の11%で、機能的にも改善が見られたそうです。ほかにも膝以外の体の痛みの改善にも効果があったとしています。
もちろん個人差はあると思いますが、自分に合った良い靴を選ぶことができれば、膝痛だけでなく、腰痛や肩凝りなども予防・改善ができる可能性が示されています。膝の健康は靴選びから、ということが言えそうです。
データが語る 令和高齢者の実像