認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

「疲れたから」と部屋にこもりがちの老親に笑顔が戻った

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「何かできることはないか。でも、仕事を辞めるわけにもいかない」と悩んでいたA子さんに、「じゃ、私が日中は家に遊びにいくようにする」と言ったのが、A子さんの娘でした。A子さんの母親からすれば、孫ですね。

 彼女は自宅でできる仕事をしており、比較的時間の融通が利く生活で、しかもおばあちゃん好き。時間を見つけてはおばあちゃん宅に通い、話し相手になり、またアルバムを引っ張り出してはおばあちゃんと一緒に眺めたり、昔の映画を見たりしていたそうです。

 すると、あんなに無気力になっていた母親の様子が変わってきた。食欲もなくなり料理もあまり作らなくなっていたのが、もともとは好きな料理を孫と一緒にするようになり、やがては得意料理を孫に教えたり、連れ立って買い物にも出かけるようになった。表情もびっくりするほど生き生きしたものに変わった。コロナ禍に入る前は、母・娘・孫の親子3代で近場の温泉旅行にも出かけたそうです。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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