がんと向き合い生きていく

入院5回目のがん患者は孫の動画を見て「一緒に歌う」と心に決めた

写真はイメージ

 ◇  ◇  ◇

 以前の入院と違ったのは、新型コロナへの対応です。すでにワクチンを4回接種していましたが、入院する3日前にPCR検査が必要でした。

 入院するP総合病院の外来の廊下の一隅で、一人一人カーテンで区切られたところに座って、蓋つきの試験管のようなチューブに唾液をためて提出します。PCR検査のために入院する直前に病院まで行くことは、遠方の方には気の毒だと思いましたが、「病院はコロナ対策をしっかり行っているのだ」と考えました。もし陽性と連絡がきたら入院が延期になるのですが、幸い陰性で予定通り入院できました。

 入院当日、付き添いの妻に荷物を持ってもらっていましたが、病棟の中に入れるのは私ひとりです。病室で着替え、治療の同意書にサインした後は、何もやることがなくなりました。病気のこと、治療法のこと、そして悪い結果になるのではないか……などが頭に浮かび不安でした。

2 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事