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人工甘味料は心臓病や脳卒中を増やす? 仏研究チームが報告

写真はイメージ
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 人工甘味料は、砂糖を使わずに「甘み」を再現できる添加物です。人工甘味料にもさまざまな種類があり、主に飲料水に用いられるアスパルテーム、ガムやキャンディーなどに用いられるアセスルファムカリウム、砂糖の600倍の甘みを有するスクラロースなどがその代表です。

 肥満の予防に効果的だと考えられている人工甘味料ですが、いくつかの研究では心臓病との関連性が指摘されていました。ただ、質の高い研究報告は限られており、その安全性については専門家の中でも意見が分かれています。そんな中、人工甘味料と心臓病や脳卒中の関連性を検討した研究論文が、英国医師会誌の電子版に2022年9月7日付で掲載されました。

 この研究では、フランスに在住している10万3388人(平均42.2歳、女性79.8%)が対象となりました。研究参加者が摂取した人工甘味料の種類や量が調査され、心臓病や脳卒中の発症リスクとの関連性が解析されています。なお、結果に影響を与え得る年齢、性別、喫煙・飲酒状況などの因子について、統計的に補正して解析されました。

 中央値で9年にわたる追跡調査の結果、人工甘味料の摂取量の増加に伴い、心臓病および脳卒中のリスクが9%、統計的にも有意に増加しました。特に脳卒中との関連性が強く認められ、その発症リスクは人工甘味料の摂取量の増加に伴い、18%増加していました。人工甘味料の種類別の解析では、アスパルテームは脳卒中、アセスルファムカリウムとスクラロースは心臓病と関連していることが示されました。

 論文著者らは、「人工甘味料の摂取は、心臓病や脳卒中と関連している可能性があり、砂糖に代わる健康的で安全な添加物だと考えるべきではない」と結論しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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