上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

小切開手術での死亡事故は経験不足の医師による不手際が重なった

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 今年10月、専門誌である日本心臓血管外科学会誌に心臓手術での医療事故を巡る論文が掲載されました。2020年12月、国立国際医療研究センター病院で実施された「MICS」(ミックス)と呼ばれる低侵襲の心臓手術を受けた70代の男性が手術中に心筋梗塞を起こし、およそ2カ月後に転院先の病院で亡くなられた件の一因として、術中トラブルから心筋を損傷した可能性が高いとしています。

 私もこの報告を目にしましたが、やはり病院側の不手際による医療事故の可能性が高いという印象を受けました。MICSとは、従来の開胸手術のように胸骨を大きく切らず、特殊器具や内視鏡を用いての手技が中心の小切開低侵襲手術です。心臓弁膜症(大動脈弁、僧帽弁)、狭心症や心筋梗塞に対する冠動脈バイパス手術、心房中隔欠損などの先天性心疾患、不整脈、心臓腫瘍といった心臓疾患が手術適応で、亡くなった男性は僧帽弁閉鎖不全症で傷んだ弁を修復する手術を受けていました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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