高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリの影響で唾液が出なくなると“食べる”に悪影響が生じる

写真はイメージ

 そして、仮になんとか食塊が作り出せたとしても、次にそれを喉に送り出さなければいけません。唾液はその時に「潤滑」の役割も持っています。パサパサの塊と潤った塊、どちらがつるっと滑って送り出しやすいかを想像してみてください。唾液が持つ「つなぎ」と「潤滑」の役割は、“食べる”ために必要な力のうち「嚥下(えんげ)」にとってとても重要なのです。

 また、意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、唾液は「味覚」にとっても重要です。唾液がないと味覚は失われてしまいます。われわれの舌の表面には味を感じ取る細胞が存在しています。ここに食べ物が到達すれば味を感じられると思われるかもしれませんが、実際はそれだけでは味はまったく感じられません。食べ物と唾液が同時に到達することで、食べ物の味の成分が唾液に溶け出してきて、それが細胞に到達することで初めて味を感じることができるのです。

2 / 3 ページ

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

関連記事