Dr.中川 がんサバイバーの知恵

皮膚がんの病院選びは形成外科の実力も重要 ドイツ代表GKノイアーは3度手術

大空真弓さんは2年前に手術(写真は2015年)
大空真弓さんは2年前に手術(写真は2015年)/(C)日刊ゲンダイ

 サッカーW杯の初戦で日本と対戦したドイツのGKノイアーは、カタールの日差しを気にしているようです。今月2日、自らのSNSで顔の皮膚がんで3度の手術を受けていたことを告白。開幕前の記者会見では「しっかり日焼け止めを塗ることが大事」と語っていました。

 皮膚がんは、人種によって発症率に差があり、彼のような白人はよく見られます。白人だと、紫外線がよく当たる部位に悪性黒色腫(メラノーマ)や有棘(ゆうきょく)細胞がん、基底細胞がんというタイプができやすい。皮膚がんの種類は多く、この3つが3大皮膚がんです。

 ノイアーがどのタイプか不明ですが、重要なのはメラノーマかどうか。メラノーマでなければ、ほとんど治ります。

 女優の大空真弓さん(82)は2年前、口の近くに皮膚がんができましたが、早期発見のため手術で回復。手術痕も分からないほどだと報じられました。

 前述の3つのうち有棘細胞がんと基底細胞がんは非メラノーマ皮膚がんと呼ばれ、欧米ではすべてのがんの半数以上。日本では皮膚がんが10万人にせいぜい2人ですが、それでも日本の皮膚がんで最も多いのが基底細胞がんです。

 基底細胞がんは高齢者に多く、顔のうち特に鼻やまぶた、口の周りなどが好発部位。一般に痛みはなく、黒い盛り上がりや光沢あるシミができて少しずつ大きくなったら要注意。顔のわずかな変化を見逃さないことが早期発見のカギです。大きさの変化が分かるように携帯で写真を撮っておくとよいでしょう。

 手術では、病変のフチから3~5ミリ広めに切除します。しっかり切除しないと、再発したり、骨や筋肉に浸潤する恐れがあるためです。

 そのため皮膚がんの手術では、皮膚科医ではなく、形成外科医が執刀することが多く、見た目はもちろん、口の開閉などを損なわないように再建手術が行われます。大空さんがきれいに回復されたのも、このようなことがあるでしょう。病院を選ぶときは、形成外科の実力とセットで選ぶことをお勧めします。

 一方、メラノーマは転移しやすく、発見が遅れると厄介です。早期発見が欠かせません。

 皮膚の中には、紫外線からDNAの損傷を守る働きをする色素メラニンがあります。白人は、この防御作用が弱いことがメラノーマを助長する要因とされますが、日本人のメラノーマは3割が足裏です。日本では、紫外線が関係するメラノーマは欧米ほどではありません。

 このメラノーマを早期発見するにも、大事なのは足裏のチェックです。メラノーマは①非対称②境界が不明瞭③色にムラがある④直径が大きい、が特徴。特に7ミリ以上は要注意といわれます。なぜ7ミリか? これを超えるとメラノーマのリスクが高くなるだけでなく、もしメラノーマでも7ミリなら転移を起こす前の早期に治療できるという意味があります。足裏のチェックでも、携帯での写真撮影が効果的です。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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