その男性は、父親が起こした会社を継ぎ、父親は週に3回、出社。母親が経理を担当し、社員は男性の他、昔から働いている人が1人いるだけ。父親との会話の中で「この話、前もしたんだけど」ということが時々あったけれど、認知症とは思いもしなかった。仕事の話のやりとりも、それなりにできていたそうです。これは、認知機能の低下はあっても、長年の経験が知識として、そして対応力として残っているからです。
そんな男性が、父親が認知症と知ったのは、母親が脳卒中で突然死したあとでした。「医者から聞いた話では、父親が認知症であることを、母親が周囲に黙っていたとのことでした。思い返せば、母親は父親をさりげなくサポートしていた」と男性。母親が突然死せず、そして「さりげないサポート」が続けば、男性が父親の認知症に気づくのは、まだ先だったかもしれません。
■初期の段階では本人が一番不安になっている
認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う