認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

認知症で「脳」が影響を受ける部分はほんの一部…95%は正常

写真はイメージ

 その男性は、父親が起こした会社を継ぎ、父親は週に3回、出社。母親が経理を担当し、社員は男性の他、昔から働いている人が1人いるだけ。父親との会話の中で「この話、前もしたんだけど」ということが時々あったけれど、認知症とは思いもしなかった。仕事の話のやりとりも、それなりにできていたそうです。これは、認知機能の低下はあっても、長年の経験が知識として、そして対応力として残っているからです。

 そんな男性が、父親が認知症と知ったのは、母親が脳卒中で突然死したあとでした。「医者から聞いた話では、父親が認知症であることを、母親が周囲に黙っていたとのことでした。思い返せば、母親は父親をさりげなくサポートしていた」と男性。母親が突然死せず、そして「さりげないサポート」が続けば、男性が父親の認知症に気づくのは、まだ先だったかもしれません。

■初期の段階では本人が一番不安になっている

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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