老親・家族 在宅での看取り方

「自宅だから、自由に動ける」 諦めていたことにもチャレンジ

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 そんな時、当院では医師や診療パートナーが、患者さんの本音をできるだけくみ取り、選択肢を多く用意しながら、患者さん自身や家族が意思決定する過程をサポートするように努めています。一歩踏み込み、患者さんはなぜそれを希望するのかという観点でじっくり傾聴して、その時々の患者さんの思いや価値観、嗜好を理解するように努めています。

 自分の選択の積み重ねで人生が出来上がっているとするなら、在宅医療を開始することはその患者さんにとって人生の縮図を体験することなのかもしれません。

 私たちの診療所で在宅医療を始められた67歳の1人暮らしの女性。子宮の内膜に発生する子宮体がんの手術を受けており、さらに短腸症候群を抱えていました。短腸症候群とは、小腸の大量切除により小腸の吸収機能が低下することで、栄養や水分の欠乏に伴い、主に下痢、脱水、体重減少などの症状が見られます。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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