患者さんからよく受ける質問のひとつが「腎臓病は遺伝しますか?」。ご自身の両親のどちらかが慢性腎臓病を患っている場合に、そういった心配をする方が多いようです。
仮に、お父さまがいま慢性腎臓病を患っているとします。まず気にすべきポイントは「なにが原因でそうなったのか」。お父さまの腎臓病の原因が遺伝性の病気にある場合は、子供も遺伝で同じ病気になった場合に腎臓病を引き起こす可能性は大きい。
また、糖尿病はある程度遺伝の影響を受けるといわれています。親が糖尿病で、自分も糖尿病になったとしたら、検査を怠らず、そして検査結果の腎臓の働きを示す項目をきちんとチェックするクセをつけるようにしましょう。
また、遺伝とは関係ありませんが、未熟児で生まれた方は少し腎臓に注意したほうがいいかもしれません。お母さんの体内で最後に作られるのが腎臓。ですから、未熟児で生まれた場合は腎臓の発育が十分でないことが多い。そういった理由で、未熟児で生まれた人は腎臓が弱りやすいという報告があるのです。
「慢性腎臓病になると、顔色が黒くなる?」というのも、よく聞かれる質問。この答えはノーです。推測なのですが、おそらくそれは昔の透析患者さんの顔色から、いつの間にか都市伝説のように広まった話ではないかなと。
30~40年ほど前でしょうか、その頃の透析患者さんは「顔が黒くなる」ことがありました。人工透析を受けるような病状になっていると、造血のホルモンを分泌するという腎臓の役割が果たせなくなり、血液が体内で作られずに貧血状態に陥ってしまいやすい。ですから、人工透析患者さんには輸血を行うことが多かったんですね。その輸血の作用で顔色が黒ずんでしまう患者さんがたくさんいたようです。
ただし、現在の治療では輸血を行わず、貧血を治療するホルモン薬などで対応できるようになりました。貧血になると心臓に負担がかかります。これは、薄い血液で全身に必要な酸素を賄うために心臓から多くの血液を送り出す必要があるためです。この透析医療技術の進歩により、透析患者さんの心不全の数が大幅に減ったと考えられています。
健康長寿のカギは腎臓にあり