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趣味を持つことは認知症の予防に効果的? 日本人対象の研究報告

写真はイメージ
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 趣味を持つことは、生活に「生きがい」をもたらし、健康状態に良い影響を与える可能性があります。実際、「生きがい」を感じている人では、そうでない人に比べて、死亡リスクが低いことを報告した研究もあります。

 趣味を持つことはまた、習慣的に体を動かしたり、物事に対する考えを深めるなど、活動性が高まることによって脳に良い刺激が与えられ、認知機能の低下を防ぐことができるかもしれません。そのような中、趣味の充実と認知症の関連性を検討した研究論文が、日本疫学会誌の電子版に2022年5月14日付で掲載されました。

 この研究では認知機能に異常がない日本人2万2377人が対象となりました。趣味が充実している人は、もともと健康状態が良好で、認知症のリスクが低い人だと考えられます。そのため、この研究では40~69歳における趣味の充実度(「趣味がない」「趣味がある」「趣味が多い」)を調査し、認知症との関連性について、中央値で11年にわたる長期の追跡調査をしています。なお、結果に影響を与え得る年齢、性別、喫煙状況、身体活動量などの因子について、統計的に補正を行い解析されました。

 調査の結果、認知症の発症リスクは、「趣味がない」人と比べて、「趣味がある」人で18%、「趣味が多い」人で22%、統計的にも有意に低下しました。

 ただし、脳卒中が原因と考えられる認知症と趣味の充実度に、明確な関連性は認められませんでした。

 論文著者らは「調査期間中に趣味をやめたり、新たに始めた人がいるかもしれず、このような趣味の変化が認知症のリスクにどのような影響を与えるのかは不明」としつつも、「趣味の充実は、認知症リスクの低下と関連している」と結論しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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