上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

MICSを受けるなら1人の執刀医が集中して手術を行っている病院が望ましい

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 今年10月、日本心臓血管外科学会誌に掲載された論文で問題視された「MICS」(ミックス)による“死亡事故”は、知識や経験が不足した外科医による不手際が重なって起こった可能性が高い──。前回、そうお話ししました。

 MICSとは、従来の開胸手術のように胸骨を大きく切らず、内視鏡を使って処置する小切開低侵襲手術です。体の負担が少なく、順調にいけば短期間で退院できるというメリットがあります。私もMICSで済む病状であれば、こちらを選択したほうが患者さんにとって有益だと考えています。

 MICSは、しっかりした知識がある経験値の高い外科医が行えば、とても安全な手術です。いくつもの処置をいっぺんに行うような複雑な手術ではなく、基本的にはたとえば僧帽弁の修復なら僧帽弁だけ、といった単一手技で済むからです。しかも、そもそもMICSは、全身状態が良く病状もそこまで深刻ではない「ヘルシーペイシェント」に対して実施されます。MICSを受ける人の約95%は“元気な患者さん”なので、術後は元気になって当たり前といえる手術なのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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