ただ、そうした「元気になるのが当然の低リスク手術」ということに外科医が甘んじて、心臓外科手術の基本である心筋保護をおろそかにして手術手技の継続を優先するような過信が生まれたり、逆に患者さんに「難しくない手術」だと説明してしまった手前、後に再発して再手術という展開にはしたくない、小切開で済ませたいから大きな切開に切り替えることは避けよう……といった意識が働くと、落とし穴にはまってしまいます。
医療の一丁目一番地である「医療安全」の観点に立った手術の正しい進め方は、これまでさまざまな医師が実施した手術で起こったいくつもの小さな問題をしっかり学習し、「こうした状況ではこんな処置をしてはいけない」といった情報を共有して進めていく、というものです。しかし、今回の事故が起こった国立国際医療研究センター病院では、正しい手続きがきちんと機能していなかった可能性が高いと言わざるをえません。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」