諦めないがん治療には「ハイパーサーミア療法」 負担が軽く高い効果

藤木院長(本人提供)

 最初に手をつけたのが脳梗塞治療用の高気圧酸素療法を腹膜播種に使うことだった。

「がん腹膜播種の患者さんは腸閉塞になりやすく、体からガスが抜けずに苦しみます。高気圧酸素療法は腸閉塞の適用があり、体内のガスを減らす効果がある。その併用は大きなメリットです。しかも、高圧酸素を使うと血液に投与した抗がん剤が腹膜の外に出てくるため、その効果がより高くなります。それは抗がん剤の量を減らすことにつながり、その副作用の苦しみから患者さんを解き放つことができるのです」

 とはいえ、それだけではがん患者を救うことにはならない。そこで出合ったのがハイパーサーミア療法だったという。

「偶然、がんの論文でその存在を知り、これだ、と思いました。ハイパーサーミア療法は、がんの固まりが42.5度以上の熱に弱いという性質を利用してがんを治療します。具体的には体の外側からがん細胞に向かって高周波電流を流してがん細胞を加温し、死滅させる。この治療法が優れているのはがん細胞だけ選択的に攻撃し、正常細胞へのダメージはあってもごくわずか、という点です。正常細胞は熱が加わると周囲の血管が拡張して血流が増えて熱を逃がしますが、がん細胞の周囲の血管は急ごしらえの新生血管なので拡張ができずに熱がこもってしまう。そのため正常細胞より早く壊れるのです」

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