認知症を予防する補聴器のすべて

求める補聴器のニーズは利用者それぞれ 最新式が合うとは限らない

補聴器は自分の生活スタイルに合わせて選ぶ
補聴器は自分の生活スタイルに合わせて選ぶ

 先日、90代の男性のご自宅に訪問しました。息子さんが一緒に住まれています。

 息子さんの話によると、4年ほど前に他のメーカーで補聴器を購入したが、いまいち聞きづらく「ないよりはマシ」といった程度だったとか。

 そもそも日中はベッドの上で寝て過ごし、外出することはありません。そのため、聞こえづらくても、それほど不便を感じず過ごされているといいます。ただ、日常生活で「今日ご飯どうする?」や「テレビおもしろいね」などという何げない親子の会話が全くなくなってしまい、これでいいのか、と息子さんは悩まれていました。たまのショートステイでも職員さんとの会話もなく、ただそこにいるだけになってしまっているようでした。

 息子さんに補聴器に対する要望などを伺ってみると、おっしゃったのが、充電器の操作は本人はできない、そして耳に入れる時に少し痛がるため、耳栓の調整が必要とのことでした。

 聴力測定や補聴器の調整は4年前にして以来やっていないということで、まずは聴力測定を実施。あいにくお持ちの補聴器は当社で調整できないメーカーだったため、聴力測定の結果を基にチューニングした当社の貸し出し用の補聴器を耳につけると、前よりよく聞こえるようになりました。耳栓も調整しました。

 ご提案した補聴器は、人気の充電式でもなく、売れ筋の小さくて目立ちにくい電池式でもない、本体も電池も一番大きなタイプを選びました。通常、電池の持ちは、充電式では約1日、電池式では1週間程度ですが、提案したものはカタログ値で最大320時間持ち、2~3週間に1度の交換でOKです。これならショートステイでお泊まりしても大丈夫だと喜ばれました。

 この経験で、一人一人のニーズは違うと改めて感じました。今回は、毎日の充電は本人ができないので、息子さんが2週間に1度電池交換する、というニーズでした。最近の人気商品が必ずしもご本人に合うとは限りません。ですから、補聴器を買う時はぜひ自分の生活スタイルや状況など、いろいろお話ししてください。一番合うものを一緒に選びましょう。

 この親子は、テレビを見ながらご飯を一緒に食べ、ぽつりぽつりですが会話を楽しめる時間が持て、ショートステイ先でも職員さんのお話が聞け、快適に過ごされているようです。

田中智子

田中智子

シーメンスの補聴器部門でマーケティングの勤務を経て、2020年補聴器販売会社「うぐいすヘルスケア株式会社」設立。認定補聴器技能者資格保持。

関連記事