感染症別 正しいクスリの使い方

【エキノコックス症】幼虫を完全に死滅させる駆虫薬はなく予防が重要

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 エキノコックスの成虫に対しては、駆虫薬の「プラジクアンテル」がほぼ100%効果があり、キツネやイヌに広く用いられています。しかし、人体エキノコックス症の原因となる幼虫に対しては、完全に死滅させる駆虫薬はなく、外科的切除が唯一の根治的治療法となります。

 がんと同じように、早期診断された時の予後は良好ですが、あちこちに転移すると取り切れなくなってしまい手の施しようがなくなってしまいます。そのため、エキノコックス症は予防がとても大切なのです。感染源となるキツネや野犬などの保虫宿主に接触しない。野山に出かけた後は手をよく洗う。キツネを人家に近づけないよう、生ゴミなどを放置せず、エサを与えたりしない。沢や川の生水は煮沸してから飲むようにする。山菜や野菜、果物などもよく洗ってから食べる。こうした対策が必要です。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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