東洋医学を正しく知って不調改善

漢方薬にも「劇薬」はあるのか トリカブトの根を乾燥させたものも

(C)日刊ゲンダイ

 劇薬とは一般的に、激しい薬理作用を持つために使用量を誤ると生命にかかわる薬物のこと。日本では厚生労働大臣により指定されています。

 実は漢方薬の中にもその劇薬はあります。代表的なところでは附子という植物の塊根を粉末にした生薬です。このブシの俗名はトリカブト。聞き覚えのある方も多いでしょう。

 主成分に猛毒性のアコニチン系アルカロイドを含み、使用を誤ると舌や手足のしびれ、嘔吐、腹痛、下痢、動悸、血圧の低下などを起こし、けいれんや呼吸不全を経て死に至ることがあります。扱いに注意が必要な漢方薬になります。

 附子は伝統的に「全身の陽を振るわせる」と重宝され、新陳代謝の機能が極度に衰弱した時や重症な冷え、頑固的な四肢のまひや関節痛などに処方されてきました。劇性及び毒性については古くから認識されており、煎じ薬の場合は通常より倍以上の時間で煎じたり、加工を加えたりして、弱毒化する工夫を凝らしながら使われてきました。

 この附子が入っている医療用漢方製剤は現在10処方ほどあり、含有するアコニチンの量により劇薬か否かに分けられています。

 たとえば漢方医学的に腎の働きの減弱や、慢性的全身の冷え症によく用いる八味地黄丸の場合ですと、各薬品メーカーによって、処方される量の違いや、服用する量などで劇薬になったりならなかったりします。

王瑞霞氏(提供写真)
王瑞霞氏(提供写真)

 また劇薬に指定されるものではないが、注意が必要な漢方製剤としてよく知られているものに麻黄が入る処方類もあります。「注意」とされるのは、麻黄の主成分であるエフェドリンが世界アンチドーピング機関の競技大会禁止薬物に指定されているためです。

 いずれにせよ漢方薬も薬です。一般的副作用はもちろんですが、まれに重大な副作用を起こすリスクがあることを念頭におき、自己判断せずに担当医師や薬剤師などに相談し使用していただきたいと思います。

王瑞霞

王瑞霞

日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員。中国山東中医薬大学卒業。中国北京中医薬大学大学院修了。日本大学医学部医学博士。鍼灸師、登録販売士。

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