冬の一番の健康法は暖かい部屋で過ごすこと「室温18度以下」は要注意と医師アドバイス

窓用の断熱シートを使うのも有効
窓用の断熱シートを使うのも有効

 東京は12月に入り急に肌寒くなった。13.4度だった11月末の最低気温は1日の8.4度から徐々に下がり、4日は4.9度となった。中高年のなかには体の温度センサーが鈍くなっていて、「多少寒くても、服を着込めば我慢できる」という人もいるが危険だ。暖房をつけるべき季節の到来である。

 世界保健機関(WHO)は2018年に冬の室内最低温度を「18度以上」と強く勧告、小さい子供や高齢者に対してはさらに暖かくするように求めている。それは、暖かい部屋で過ごすことこそが冬場の最も有効な健康法だからだ。北品川藤クリニック(東京都品川区)の石原藤樹院長に話を聞いた。

 英国でも冬季の住宅内許容室温を18度と定めている。冬季の室内温度が18度未満で血圧上昇・循環器疾患の恐れがあり、16度未満で呼吸器系疾患への抵抗力が低下、12度以下で血圧上昇、心臓血管疾患リスクが高まるからだ。

 実際、心と体の司令塔である脳の神経は冬に寒い家に住んでいると質が悪くなるとの話もある。慶応義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授らが40代から80代の150人の脳画像をもとに脳の神経繊維の質を調べたところ、冬場の居間の室温が5度高い家の住人の脳年齢は10歳若く保たれていた。寒い家では室温の変化が激しく、それに応じて血管の拡張縮小が繰り返された結果、動脈硬化が進むためだという。

 むろん、脳神経の質が悪くなれば健康が損なわれるのは当然で、寒い部屋で眠れば睡眠に悪影響があり、翌日の作業効率も低下する。それだけ、寒い部屋は多方面にわたって健康を損ねるということだ。

 逆に、持病のある人で高断熱住宅に転居した人はその後に持病がどうなったかをアンケート調査した研究がある。それによると、ほぼ無断熱の家から断熱のある家に引っ越した人は、気管支炎、喉の痛み、アトピー性皮膚炎など8つの症状に改善がみられたという。高断熱住宅ではアレルギー疾患の原因となるダニやカビの発生が抑えられるうえ、血圧も安定し、室内の活動が活発となる。しかも遮音効果が高く、騒音のストレスも低下するからだ。

■床近くの温度にも注目

 では現在、高断熱ではない住宅に住んでいる人はどうすればいいのか?

「一番は断熱で気密性の高い家に住むことですが、すぐには無理です。まずは長く過ごす居間と寝室、それに心疾患などを発症しやすいトイレとお風呂を暖めることです。最初に行いたいのは窓対策です」

 冬場に室内から熱が外に逃げる割合は外壁15%、床7%、屋根5%に比べ、開口部が58%といわれる。窓からの冷気侵入を防ぐことは冬場の健康には重要だ。

「仮に部屋の中を暖めても『コールドドラフト現象』といって、室内の空気が冷たい窓ガラスで冷やされ部屋の下に広がり、暖気が上に逃げるという空気の流れができて、足元が常に寒いという現象が起きます。これを防ぐためには窓そのものを工事して二重、三重のものに替える、いまの窓の内側に新たな窓を設置する、暖房器具を窓際に置く、厚手のカーテンを床まで垂らすなどの方法があります」

 ホームセンターではワンシーズン使い捨ての窓用断熱シートが販売されている。とくに「プチプチ」と呼ばれる気泡緩衝材が使われたものは保温性が高く結露対策にもなると人気になっている。

 床暖房も重要だ。「断熱性の低い一般住宅」「高断熱住宅」「床暖房付き高断熱住宅」を高さ1.1メートルの室温が20度になるように暖房した場合、床との温度差は高断熱住宅は1~2度差だったが、断熱性の低い一般住宅は5度あったという報告もある。床暖房がなければホットカーペットを敷くのもいい。エアコンで暖を取っている場合は加湿器を併用して空気の乾燥対策をすることが大切。できれば40~60%を目指したい。

「台所続きの居間なら料理による湯気などで湿度が保たれますが、問題は寝室です。寝る前からエアコンのスイッチを入れ、寝るときには加湿器を稼働させましょう」

 トイレやお風呂の脱衣所は小型の電気ストーブを設置するのもいい。トイレでは前述のホットカーペットもいいかもしれない。窓には居間と同じく断熱シートを貼ったり、床まで届くカーテンをつけるのも手だ。

 なお、冬の寒さに備えて高断熱、高気密住宅が普及している北海道や東北に比べ、一般住宅が多い関東以南の方が冬場の脳梗塞などのリスクが高いとの声もある。温暖な気候の地域に住んでいるからといって冬の寒さを甘くみてはいけない。

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