健康に良い冬場の着こなし方 「快適環境生理学」の大学名誉教授が指南

外出時は首回りを露出しないことが大事
外出時は首回りを露出しないことが大事(C)日刊ゲンダイ

 12月に入りメッキリ寒くなってきた。東京の最高気温は12月2日の13.3度から6日には8.6度まで下がった。寒さは作業効率を落とすだけでなく健康を損なう。心筋梗塞や脳梗塞を発症して亡くなる人もいる。だからこそ冬場の健康対策の基本は暖かい着こなしにある。そのポイントを神戸女子大学名誉教授の平田耕造氏に聞いた。同氏は快適環境生理学が専門。「衣類は気象条件の急変や室温差に対抗してポータブルな快適環境をつくるもの」という考えから衣類の体調管理を研究している。

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 英国保健省は冬場の室温を18度以上に保つことを求めている。18度未満だと血圧上昇や循環器疾患のリスクが高まり、16度以下では呼吸器疾患、12度以下では心臓疾患のリスクが高まるからだ。

 低い気温はそれだけで危険なわけだが、気温と健康との関係でいえば寒暖差も重要だ。

 1日の寒暖差が大きいと体温調節をする自律神経が乱れて、倦怠感、肩こり、頭痛、めまい、不眠などの寒暖差疲労が起きることが知られている。

 それも、短時間に大きな変化に襲われると体は温度差以上に大きな反応を見せる。それが心筋梗塞や脳梗塞につながることもある。

 気温の健康リスクから身を守るには屋外でも屋内の温度と大きく変わらない暖かい服装が必要だ。

「冬場の服装で一番大事なことは外出時に首回りを露出しないことです。首回りや顔面は冷たさを感じる温度センサーが多く、顔面は太ももの3倍寒さの感度が高い。そのセンサーから寒さが報告された脳は皮膚の血管を収縮させて体温を保つよう指令を出します。すると特に四肢の末端では直径が毛細血管の10倍、血流量は1万倍も流れる動静脈吻合(AVA)と呼ばれる体温をコントロールする特別な血管が閉じ、血流量は激減します。結果、手足さらには腕や脚も冷たく感じるようになるのです」

■まずマフラーで首元を守る

 問題はこの手足の冷えは体全体の冷えにつながることだ。

「いったんAVAが閉じてしまうと元に戻るには時間がかかり、全身が温まりにくくなります。そのため必ずマフラー、手袋は室内で着用し、数分過ごした後に外出することが大切なのです」

 もちろん、外出する際は襟元や袖口などの開口部は閉じておくこと。せっかく体幹部で暖まった空気がそこから逃げ出し寒くなってしまうのを防ぐためだ。

 ただし、体を動かすなどして服のなかで熱がこもり汗をかくようなときは、すぐに開口部を開けられる。そんな服装が望ましいと平田名誉教授は言う。

「基本的には一番外側には風を通しにくいアウターを着用し、その下には編み目の大きいセーターや裏起毛のトレーナーなどが良いでしょう。衣服で暖かさを保つには体から発せられた熱をできるだけ衣類にとどめることが大切です。空気は熱を伝えにくいため空気を多く含む衣類ほど保温効果がある。その意味で編み目の大きい衣類、ふんわりした着心地の衣類は保温性が高いといえます」

 重ね着は空気の層を幾重にもつくり、暖められた空気を逃がさないという意味で重要だ。ただし、オーバーサイズの衣類だと衣服と衣服の空間が大きくなり過ぎて空気の対流が起きて熱が逃げてしまう。

 しかし空気層がつぶれてしまうほど密着する重ね着では、せっかくの保温性が失われてしまう。大切なことは、重ね着ではできるだけ動かない空気層が重なるサイズの衣類を身に着けることだ。下着はどうか。

「人は不感蒸散といって自覚のないまま1日数百ミリリットルの水分を皮膚から蒸発させています。皮膚から蒸発する水分を吸収して熱に変える機能を備えた吸湿発熱タイプの下着を使うのもいいかもしれません」

 ただし、人によっては皮膚が乾燥してかゆみが出ることもあるからその場合は注意したい。

 低体温を回避し、寒暖差をなくせば冬場の健康は保たれる。平田名誉教授の着こなし方をマスターすれば、あなたもこの冬を元気に過ごせるはずだ。

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