認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

アルツハイマー病の薬「レカネマブ」は夢の新薬と言えるか?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 11月29日付の米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」に関する論文が掲載されました。レカネマブは、製薬会社エーザイと米バイオジェンが開発中の薬になります。

 アルツハイマー病の原因物質とされるのが、アミロイドβです。正常な脳にもあるタンパク質ですが、これが何らかの理由で作り出される量が増えたり、性質が変異して分解されにくくなったりすると、脳の神経細胞の周辺に沈着し、神経毒として働くようになります。結果、神経細胞を死なせてしまい、海馬を中心とする脳が萎縮して、やがてはアルツハイマー病に至るのです。

 レカネマブは、このアミロイドβの除去を目的とする薬です。沈着したアミロイドβは塊となってシミのような「老人斑」を形成するのですが、この前の段階で、人工的に作った抗体と結合させて神経細胞が死滅するのを回避しようとするもの。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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