がんと向き合い生きていく

年の暮れに届いた喪中はがきで頭に思い浮かぶ旧友との思い出

 毎年、暮れが近づくと「喪中はがき」が届きます。親戚のだれだれが亡くなって……などと書いてあれば分かるのですが、それがないと「どなたが亡くなったのだろう」と気になってしまいます。「母が97歳で……」とか、「祖父が93歳で……」といった記載があればそれなりに納得しますが、若い方が亡くなると、かわいそうでシュンとしてしまいます。

「年頭のご挨拶は失礼させていただきます」

 同級のS君が亡くなった。奥さんからはがきが届いたのです。

 もう、40年近く会っていません。そういえば、S君とは毎年年賀状を交換していたのですが、昨年は来ませんでした。

 気になって、電話をしてみました。奥さんが出ました。最初は私に気づかなかったようでしたが、すぐに分かってくれました。

 膵臓がんでした。S君は病院に入院するのを嫌がって、6カ月の間、自宅で奥さんと娘さんが看病していたようです。最後は褥瘡(床ずれ)をつくらないように、体位を時間ごとに変えたと話されました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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