老親・家族 在宅での看取り方

自力で歩いての通院が「病気に打ち勝つ気概」の確認になっていたが…

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 先日、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)を患う男性が私たちの在宅医療を始められました。75歳で1人暮らしの方です。

 T細胞は、主に免疫機能を担っている血液の白血球の一種。末梢性T細胞リンパ腫とはその白血球の中のリンパ球に異常がみられ、無制限に増殖することで発症する血液のがんです。主な症状は、増殖したT細胞が集まってできるリンパ節の腫れ(しこり)や圧迫感で、ときに高熱が出ます。この患者さんの場合は、このリンパ腫が白血病化しており、いつなんどき急変してもおかしくない状態でした。

 昨年、不調で病院を受診したところ、このPTCLと診断。今年の春から病院に通院しながら化学療法を受けていました。

 ご本人としては体調が落ち着いたら治療できると期待しており、短い距離なら歩行が可能ということで、当初は通院を続けておられましたが、心不全を発症し入院。ADL(日常生活動作)も低下し、今回の在宅医療を一時的に受け入れることとなったようです。入院中には酸素吸入も行われていたということで、自宅で酸素吸入を行う在宅酸素療法(HOT)も備えながら在宅医療を開始したのでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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