健康長寿のカギは腎臓にあり

腎臓エコー検査は腎機能低下や尿タンパクが出ているときに行う

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今回お話しするのは「腎臓エコー」。健康診断で腎機能低下や尿タンパクが出ているとなったときに行う検査です。

 健診では「腹部エコー」も行いますが、こちらは腎臓を含む腹部の臓器にがんがないかをチェックすることが主目的です。

 一方、腎機能が低下している場合は、原因を調べるために腎臓の形や必要に応じて腎臓に向かう動脈の状態、血流量をチェックします。具体的には、下記の内容を調べます。

【腎臓の大きさの異常と左右差の有無】

 腎臓は一般的に、機能が低下すると小さくなっていきます。動脈硬化による腎障害などの場合は、特に小さくなりやすく、腎臓の表面がボコボコしてきます。「糖尿病性腎症」「肥満関連の腎症」などが原因で機能低下している場合には大きくなっていきます。

【腎臓の腫れ】

 医学的に正確ではありませんが、画像を見て「腎臓が腫れている」と表現することがあります。これは腎盂(じんう)と呼ばれる腎臓から尿管への移行部が拡張した状態。腎臓より下の箇所に異常があり、尿の流れに滞りが出て腎臓を圧排して腎機能が低下することを「腎後性腎不全」と呼びます。

【腎結石の有無】

 腎結石だけで腎機能低下が起きるのは比較的少ないです。

 結石がある場所や、大きさによって治療を行う場合と行わない場合があります。

【腎臓の腫瘍・嚢胞】

「腎臓に影がある」という表現を用いますが、この場合は中に細胞が詰まった「充実性の腫瘍」と、液体が詰まった「嚢胞」に分けられます。腫瘍は悪性の可能性があるため、精密検査が必要。嚢胞は良性である場合が多いものの、大きすぎたり、内部に充実成分があるものは悪性の可能性もあります。

 なお、腎臓エコーで「石灰化」を指摘される場合もあります。これは腎臓にカルシウムが沈着した状態。ほとんどの場合は放置しても問題がないと言われており、ほかの科を受診する必要がないことが多いです。

 高血圧や糖尿病など、腎臓が悪くなる原因はまったくないのに、健康診断で「腎機能低下」となり、再検査で当クリニックに来た患者さんがいました。「なぜ機能低下したんだろう」と思いながら腎臓エコーを行ってみたところ、片方の腎臓が3分の1の大きさになっていた──。そんな事例もたまにあります。

 なぜ腎臓が悪いのかをつきとめるためにも、腎臓エコーは欠かせない検査なのです。余談ですが、なぜ片方の腎臓が小さくなってしまったのか、残念ながら検査をしてもわからないことが多々あります。

 一般的には腎臓は片方になってもしっかり働いてくれるので、健康診断などで体に異常がない方であれば問題にならないことも多々あります。が、2つの腎臓で受ける仕事を1つで受けるので高血圧、糖尿病、肥満などの腎機能を悪くする原因にはより注意が必要です。

 費用は、健康診断で何らかの画像の異常を指摘されている場合は保険診療で行うことが可能。3割負担で2000~3000円程度になります(診察料を除く)。

森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

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