健康長寿のカギは腎臓にあり

検診結果が返ってきたら「GFR59以下」になっていないか必ず確認を

檀れいさんのCMで注目
檀れいさんのCMで注目(C)日刊ゲンダイ

 女優の檀れいさんが、腎臓とGFRについて話すCMがあります。昨年の秋ごろから放送されるようになり、目にした方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 あのCMはNPO法人日本腎臓病協会と製薬会社のアストラゼネカ社が、腎臓病の克服に向けた取り組みの一環として制作したもの。CMの中で檀さんが「GFR値59以下の方は、お医者さんにご相談を」と話している通り、健康診断などの検査結果を受け取ったらGFR値を必ずチェックするようにしてください。

 GFRは、糸球体で1分間で処理される血液量のことで、腎臓のいまの働き具合を示す重要な数値です。60以上が正常となり、数字が低いほど腎臓の機能が悪いことになります。この連載でも何度か話していますが、腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど非常に我慢強い部位。GFR値が59以下で多少働きが悪くなっていたとしても、自覚症状に乏しいのが特徴です。

 そのため、「どこもつらくないから」と再検査を後回しにしがちですが、失われた腎臓機能は元に戻らないので、いま現在より下がらないよう注意をしていかなければなりません。早めに再検査を行い、自分の腎臓の状態を詳しく知るようにしてほしいと思っています。

 再検査をした結果「慢性腎臓病」だと診断された。では「慢性腎臓病」とはなにか。われわれ医師はCKD(chronic kidney disease)と呼んだりもしますが、GFRや尿タンパクの異常、腎臓の形の異常などの何らかの腎臓の異常が3カ月以上持続している場合と定義されます。GFR値と、尿タンパクの値によって診断します。

 けれども、「慢性腎臓病」と診断された人は軽症な方から重症の方など多岐にわたります。

 GFRが45以上59以下で尿タンパクが出ていない軽症の方は6~7割程度を占めるといわれています。つまり、慢性腎臓病の中でも「軽度」「中等度」「高度」と重症度を示すステージ(フェーズ)があるということなんですね。

「慢性腎臓病になったら、すぐに人工透析?」

 患者さんから多く受ける質問のひとつです。先ほど話したように、慢性腎臓病にはステージがあるので、どこに位置しているかによって治療方法は異なる。

 人工透析は、ステージ5の重度に分類される患者さんが受ける治療となります。

 とはいえ、自分のステージは軽度だからといって油断は禁物ですよ。腎臓は全身の多くの部位が正常に動くために指令を出している臓器です。そのため、軽度であっても、健康な人と比較すると脳や心臓の病気を引き起こしたり、筋力が衰えやすいといわれています。慢性腎臓病は全身疾患とみなして治療を考えていくべきだと私は考えています。

森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

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