また、静脈には非常に弱い部分があり、たとえば骨盤に近いところの血管は焼灼などを行うとかえって出血トラブルを招く危険があるため、あまり深い場所の処置はできませんでした。
一方、血管内塞栓術は静脈瘤のある血管内をエコーで確認しながら接着剤を注入して機能させなくするだけなので、確実性が高いうえに体の負担が少なく、回復も早くなります。さらに、血管内焼灼術では、静脈瘤がある血管を焼くときに痛みが出ないよう血管の周囲に局所麻酔薬をしみ込ませる必要がありましたが、血管内塞栓術では血管の中に接着剤を注入するだけなので、血管の周りへの影響がなく、麻酔はカテーテルを挿入する部分だけで済みます。
麻酔薬に対するアレルギーがある人でも、最初に注射針を刺すときに少しだけ痛みに耐えれば、麻酔なしで処置を行えるという利点もあります。
血管内塞栓術の適応は、皮膚の変色やただれがなく、患部の血管の直径が12ミリ以下の症例に限られ、接着剤の成分に対するアレルギーがない人が対象になりますが、これまでの治療を受けられなかった患者さんにとっても“救い”になる治療といえるでしょう。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」