医者も知らない医学の新常識

脱毛治療薬に認知症やうつ病のリスクあり? 米国医学誌で報告

写真はイメージ

「フィナステリド(プロペシア)」や「デュタステリド(ザガーロ)」は、男性型の脱毛の治療薬として広く使用されている薬です。男性型脱毛症はAGAとも呼ばれ、専門のクリニックもあるほど、その治療は一般的なものとなっています。

 この2種の薬はいずれも、5アルファ還元酵素阻害剤と呼ばれる同じ仕組みの薬です。男性ホルモンの局所での作用を抑えることによって、脱毛を治療しようというのです。デュタステリドは同じ作用から、前立腺肥大症の治療薬としても、その使用が行われています。

 この2種類の薬は有効性と安全性が確立されていると考えられていました。しかし最近、認知症やうつ病のリスクを増加させる可能性が指摘され、問題となっています。

 昨年の米国医師会関連の医学誌に、スウェーデンでの調査結果が報告されています。中高年の男性220万人以上を対象として、5アルファ還元酵素阻害剤の使用と、その後の認知症やうつ病のリスクとの関係を検証したところ、フィナステリドの使用により22%、デュタステリドの使用でも10%、認知症のリスクが増加していました。うつ病のリスクについては、フィナステリドの使用により61%、デュタステリドの使用でも68%の増加が認められたのです。

 こうした薬を使用していて、物忘れや気分の落ち込みが見られた人は、医師や薬剤師に相談する必要がありそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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