健康長寿のカギは腎臓にあり

腎臓の食事療法は「ステージ」によってやり方が異なる 自己判断は禁物

自己診断は禁物。専門家の指導を受けるのも有効な手のひとつ
自己診断は禁物。専門家の指導を受けるのも有効な手のひとつ

 前回お話しした慢性腎臓病(CKD)について、もう少し続けたいと思います。CKDは、何らかの腎障害が3カ月以上持続する場合と定義されており、GFR値(糸球体で1分間で処理される血液量)と、尿タンパクの値、画像検査での腎臓の形の異常などで診断します。GFR値59以下が3カ月続くと、慢性腎臓病と診断されます。

 慢性腎臓病には「軽度」「中等度」「高度」と重症度を示すステージがあり、GFRの数字が小さいほど重症。ステージによって治療法や普段の生活で気をつけることなどが異なってきます。

 慢性腎臓病と診断された患者さんは「すぐに透析治療になる」と思い込むことが多いのですが、人工透析は、最も重症であるステージ5に分類される患者さんが受ける治療。現在、慢性腎臓病と診断された患者さんの約8割が「軽度(ステージ1~3a)」に位置しています。

 ただし、「軽度」だからといって、「放置していても問題ない」とは考えてほしくないんです。患者さんから「『軽度なので(治療は)何もすることはない』と医者に言われた」「経過観察と言われた」といった話を聞くことがよくあるのですが……。

 そういう経験をした患者さんは、翌年の健康診断でまた再検査となっても「どうせ何もすることないんだろう」と自己判断で放置してしまうことがあるんですね。でも、慢性腎臓病は数カ月から数十年という時間をかけてゆっくりと進行する病気。

「大変なことですよ!」と大げさにあおるようなことは言いたくないのですが、そうはいっても軽度とはいえ、何もせずにそのままの生活を続けていいわけではありません。

 腎臓の働きが低下するのを食い止めるために、食事や運動などの生活習慣を直す必要があります。その生活習慣改善についても、自己流の判断ではなく、必ず医師に相談してほしいんです。

 先ほども言ったように「慢性腎臓病=人工透析」の思い込みがある人が多く、ネットで少し検索して誤った食事法を取り入れてしまい、逆に健康を害してしまった患者さんも。

 ステージ5の透析患者さんと、軽度に位置する患者さんではまったく食事内容が異なります。透析患者さんは厳しい食事制限があるが、軽度で高齢の患者さんならカロリーをきちんと取って運動をしなければならない。

 医師サイドとしても、なかなか外来の限られた時間の中で十分に説明するのは難しい。その場合は、腎臓病療養指導士という資格をもった腎臓に詳しい保健師・看護師や管理栄養士などのコメディカルスタッフを活用するのも有効な手です。

 いずれにせよ自己判断は禁物です。

森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

関連記事