年末年始の寒さや暴飲暴食で「腎臓」がピンチに!?

 年末年始は寒く家で過ごした人も多いだろう。またこれからの時期、新年会などもあって暴飲暴食に陥り、生活もついつい不規則になりがちだ。しかし、そんな時だからこそ忘れてはならないのが腎臓のケア。その働きが悪くなると、むくみやだるさなどの不調を起こすだけではなく慢性腎臓病にもつながる恐れもあるというから気をつけたい。

■腎臓は血液をきれいにしてくれる大事な臓器

 そもそも腎臓は血液をフィルターにかけて老廃物や毒素など不要なものを取り除き、必要な成分や水分を調整してミネラルや血圧、pH、骨の合成、赤血球の造血などをコントロールする働きを担っている臓器。つまり、スポーツチームの監督が選手の配置や入れ替えを指示してチームのバランスを戦略として考えるのと同じように、腎臓も血液の成分や水分を調整して体のバランスを整えているというわけだ。

 腎臓はさまざまな役割を持っているが、その中で見逃せない大きな働きの1つに「尿を作る」ということがある。

 腎臓は1日に約1500リットルもの血液を約200万個のフィルターで濾過し、150リットルほどの原尿と呼ばれる尿のもととなる液体を作る。そして、この原尿から体が必要とする量の糖、ミネラル、水分を回収して血液に戻すとともに過剰な糖、ミネラル、体に有害な毒素を最後に尿として排泄するのだ。

朝一番に尿のチェックを!

 もともと腎臓は「沈黙の臓器」といわれるほど、病気にかかっても初期の段階では症状が現れにくいという特徴がある。腎臓を守るにはどうしたらいいのか、腎臓疾患のスペシャリストとして知られるつばさクリニックの大山恵子院長に聞いてみた。

「気をつけていただきたいのは高血圧・肥満など生活習慣病がある場合で、最近では、尿酸値が高くなると腎臓に負担がかかることが次々と明らかになってきました。尿酸値を上げないようにする腎臓ケアはもちろん年間を通して重要ですが、特に冬は寒さ、脱水、暴飲暴食による塩分などミネラルの摂りすぎといった腎機能に悪い影響を及ぼす条件が揃ってしまうことが多いので、注意が必要ですね。寒さは血管を収縮させ高血圧になり腎臓機能に悪い影響を及ぼします。冬はイベントも多く、尿酸値を上昇させるプリン体の摂取量が増えやすくなる時期でもあります」

 大山院長によると、腎臓の状態は朝一番の尿を観察することで自分でもチェックすることができるので、気になる人は毎日確認する習慣をつけることがおススメだという。

 なぜ朝一番がいいのかというと、尿の成分は活動状態や心理状態で変化するためで、尿にたんぱく質や血液などが混じっていると色やニオイなどに変化が見られるようになるからだ。尿が濁ったり泡立っていたり、濃い黄色やコーラ色になっていたり、あるいはニオイがきつかったりなど少しでも異常を感じたら早めに病院に行くようにするといいだろう。

つばさクリニック 大山恵子院長
今注目の「腸腎連関」

 近年、腸内細菌のバランスが乱れると腎臓に影響することが明らかになっており、この関係は「腸腎連関」と呼ばれて注目を集めているという。つまり、腸内に悪玉菌が増えると尿毒素といわれる悪玉菌を出す毒素が蓄積するため、それが結果的に腎機能の低下につながるというわけだ。

 加えて、慢性腎臓病患者は腸内細菌の善玉菌が少ないことも分かっており、便秘を改善することが治療の1つにもなっている。

 前出の大山院長も、

「腎臓ケアにとって腸活がとても重要であることは間違いありません。そのためには日頃から食物繊維や発酵食品を積極的に摂るようにして、腸の状態を整えておくようにするといいでしょうね」

 と腸活の重要性を強調する。

 発酵食品でいえば、昨秋には鳥取大学医学部の久留一郎特任教授らのグループが実施した試験で、血清尿酸値の高めな人16人を対象に乳酸菌PA‐3株入りヨーグルトを8週間摂取させたところ、血液中だけではなく尿中の尿酸値も低下したという研究も(グラフ)。腸活と尿酸値対策を兼ねた研究といえそうだ。

 このほかにも、小まめな水分補給、塩分控えめの食生活、日々の運動習慣や睡眠時間の確保にも気を付けたい。

 人間の臓器の中で心臓や肝臓に比べてどちらかといえば地味な存在の腎臓だが、「肝腎要(かんじんかなめ)」という言葉があることからも分かるように実はとても重要な臓器なのだ。それだけに日頃から腎臓のことをしっかりチェックして健康的な生活を送りたいものである。

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