科学が証明!ストレス解消法

相づちはコミュニケーションの万能薬 話し手も聞き手も気持ちよくなる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 誰かとコミュニケーションを取るとき、みなさんはどんなことに気を使っているでしょうか?

 やってはいけないこととして、たびたび挙げられるのが、否定的な言い回し、相手に対するマウンティング、主義主張の押し付けなどでしょう。

 たとえば、「私は季節の中では冬が好きです」と言われたとして、「寒いからイヤでしょ」とか「日本の冬なんてロシアに比べれば寒くないから、好きだなんて言えるんだよ」などと言おうものなら、会話自体も冷え込んでしまうこと必至です。

 こうしたご法度行為さえ避ければ、比較的コミュニケーションは図りやすいと思うのですが、さらに覚えておいてほしいテクニックが「相づち」です。東京大学の川名の研究(1986年)によって、相づちはコミュニケーション上、とても有効的であることが示されています。

 実験は、東京大学に通う学生を被験者に行われました。「心理学実験の手伝い」という名目で、4人のうち2人を話し手、他の2人を聞き手として役割を与え、協力してもらいました。しかし、この設定はあくまでカムフラージュで、実際には4人全員が被験者でした。

 話し手の役割を演じてもらう被験者には、3枚の絵のコピーを渡し、それらを材料にできるだけ面白くドラマチックな短い物語を創作してもらうように依頼したそうです。実験当日、話し手には、2人の聞き手にそれぞれ同じ物語を約10分間、話してもらいました。その上で、聞き手に対しては、意図的に相づちを多く繰り返すケースと、極端に相づちを打たないケースを設け、比較しました。

 その結果、4つのことがわかりました。

①話し手は、相づちのある聞き手を、相づちのない聞き手より好意的に評価した。
②聞き手は、自分が相づちを打った話し手を、相づちを打たなかった話し手より好意的に評価した。
③相づちの有無の違いによって変化する対人魅力特性は、感情的・社交的魅力に関係し、知的・道徳的魅力とは関係がなかった。
④対話状況においては話し手の方が、聞き手より、対人感受性が敏感であることが明らかになった。

 興味深いのは②のケースでしょう。聞き手は、相づちによってコミュニケーションを取った話し手に、より好意を感じる……これは目からウロコかもしれません。

 聞き手が相づちをすることで、話し手はより気持ちよく話してくれる。そして、聞き手もコミュニケーションを、より楽しめる。相づちはコミュニケーションの万能薬とも言えるテクニックというわけです。

「この人と仲良くなりたい」と思うとき、「合わせなきゃ」という意識が働き(それがストレスになってしまうことも!)、かえってうまくいかないケースもあると思います。しかし、そんなに肩ひじを張らずに、まずは相づちを意識してみるといいでしょう。

 コミュニケーションには同調や理解というワンクッションがあることが望ましいのです。それにおいて、ささいな相づちでも大きな効果がある。どうぞ、お忘れなく。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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