糖尿病の人は歯科治療を受けるときは「感染」と「低血糖」に注意

写真はイメージ(C)PIXTA

 健康寿命を延ばすために欠かせない歯のケアや歯科治療は、持病を抱えている人にとっても重要だ。しかし、健康な人とは違って注意すべきポイントがいくつもある。今回は「糖尿病」のケースについて、小林歯科医院院長の小林友貴氏に解説してもらった。

 糖尿病は歯周病と密接に関係している。いずれも、炎症の悪化や組織の障害に関わる「TNF-α」という炎症性サイトカインの血中濃度が高くなるため、糖尿病があれば歯周病や歯の喪失リスクが高くなり、歯周病があれば糖尿病の状態を悪化させることにつながる。だからこそ、糖尿病の人にとって歯のケアや歯科治療は重要なのだ。

 とはいえ、糖尿病の人が歯科治療を受ける際は注意しなければならない点がある。

「糖尿病の患者さんは『易感染性』と呼ばれる感染症にかかりやすい状態になります。高血糖では、白血球の一種である好中球の機能が低下して、体内に入り込んだウイルスや細菌を排除する働きが悪化するうえ、毛細血管の血流が悪化して酸素や栄養を体の隅々まで十分に届けられなくなり、細胞の働きが低下するためです。われわれの口腔内には、歯周病を引き起こす原因菌をはじめ、約400種類、100億を超える細菌が常在しているといわれます。抜歯や歯石除去、インプラントなどの出血を伴う外科的な歯科治療を実施したときにそれら常在菌が血管内に侵入すると、健康な人は問題なくても、高血糖の患者さんでは菌血症などさまざまな感染症を起こすリスクがあります。ですから、糖尿病で血糖コントロールが不十分な場合、外科的な歯科治療は行わないケースがあります」

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