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「そのうち治る」と思っていたら、どんどん痛くなり眠れなくなった

写真はイメージ
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 コロナ禍で巣ごもり生活やテレワークが普及し、日常的な活動量がすっかり減少。その影響で、腰痛、首や肩の痛み、肘の痛みといった運動器疾患を訴える中高年が増えています。そんな方がどう過ごしているうちに症状が強くなったのか、いろいろお伝えしたいと思います。

 50代の女性が、肩の痛みがお悩みで来院されました。

「半年前から左肩の痛みが出てきていましたが、そのうち治るかと思って、ずっと放置していました。周りでも五十肩ってなかなか治らないんだからね、1年かかったからといわれたんですよ。まあ気長に付き合っていくかと思っていました。でもどんどん痛くなるんですよ。夜中、特に痛みが強くなって、全然眠れなくてつらくて」

 このような方はたくさんいます。ここで厄介なのは、一般の方々がよく口にする「五十肩はそのうち治るから」。過去の研究では、約半数程度は2年経っても症状が残ったとされています。

 そのうち治る──。これは人が持つ自分本位の考えではないでしょうか。

 人は、痛みが強くなるまでは「そのうち治る」と楽観するのは仕方ないと思います。さらに人はもともと運動が嫌いな遺伝子が組み込まれています。それゆえによほど自分を律しない限り、肩の痛みが生じてくると運動をますますしなくなります。「痛み↓運動しなくなる↓肩以外のところも筋肉が硬くなる↓再び肩の動きなどに悪影響を及ぼす」という、負の連鎖が起こるのです。

 ここで、ひとつ論文になった研究を交えてお伝えします。2017年に「Physiotherapy」という雑誌から下記の結論が導き出された研究が発表されました。

「凍結肩(五十肩のひどくなった状態)は自然に治るエビデンス(証拠、ないしは確証)はない」

「そのうち治る」と我慢して、その我慢が報われるならいいのですが、肩の痛み、中でも五十肩が疑われる場合は、そうとはいかない可能性が高いのです。

森大祐

森大祐

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

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