健康長寿のカギは腎臓にあり

プロ野球の大和選手の「慢性腎臓病」発表から……若いうちから尿検査を

契約更改交渉後に、会見で慢性腎臓病を公表したDeNAの大和内野手(C)共同通信社
契約更改交渉後に、会見で慢性腎臓病を公表したDeNAの大和内野手(C)共同通信社

「先生、慢性腎臓病って若くてもなることがあるんですか」

 クリニックにいらした患者さんから、こんな質問を受けました。昨年「若いうちから、腎臓検診」とのメッセージを流すCMを見て、そんなふうに感じたんだそうです。

 患者さんが目にしたのはきっと日本腎臓財団が制作したCMだろうと思います。人気漫画の「島耕作シリーズ」から、ヤング島耕作、会長、取締役、社長、部長とさまざまな年代の島耕作が登場し、腎臓検診の大切さを24歳のヤング島耕作に語りかける──。そんな内容となっています。

 冒頭の患者さんへの答えは、「若いうちから慢性腎臓病になる可能性はあります」です。最近では横浜DeNAベイスターズの大和内野手(35)が、幼少時から慢性腎臓病を患っていることを公表。同じ病気の子供たちにエールを送り話題となりました。覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 一般的に腎臓の機能低下の原因は、生活習慣と、そして加齢が原因であることが多い。ただ、若い世代の慢性腎臓病は、生活習慣病が原因であることは比較的まれです。

 それ以外の免疫の病気やなんらかの特別な病気があって、その結果、慢性腎臓病を引き起こしてしまう。だからこそ、「まだ若いから関係ない」と思わずに、若いうちから腎臓検診はやっていただきたいんですね。

 腎臓検診で行うのは尿検査や採血なので、患者さんに負担がかかる検査ではありません。CMで言っている「腎臓検診」も、「定期的に尿検査を行うように」というメッセージが主なのだろうかと思います。

 尿検査を行うと、腎尿の中にタンパクが混じっているかどうかがわかります。タンパクの混じった尿は「タンパク尿」と呼ばれ、腎臓に何らかの異常が起きていることを示すSOSのような役割を担っています。

 腎臓は「必要なものを体にとどめて、不要なものをろ過、尿として体外に出す」という役割を担う臓器。腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の塊のようなものがあり、これがフィルターの役目をして、血液中のいらないもの(老廃物)を取り除き、血液をきれいにしています。ところが、その機能が低下し異常が出ると、タンパクを尿として体の外に出してしまうことがある。タンパクは私たちの体にとっては必要なもの。ですから、本来は体の外に出ることはないのです。

 尿として体外に排出するのは、明らかに体のエラー。これをチェックするのが尿検査で、腎臓検診の中でも非常に大切な役割がある検査です。

 仮に腎臓病であったとしても、健やかに自分の人生を送っている方がたくさんいらっしゃいます。内臓の中では地味で普段は目を向けることのない自分の腎臓と、検診で年に1度だけ向き合ってみてもいいかもしれません。

森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

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