「○○さんってお酒を飲むと人格が変わるよね」「△△さんはお酒を飲むと笑い上戸になる」などなど、お酒は人の性格を変えてしまう飲み物かもしれません。たしかに、「酒乱」という言葉もあるくらいですから、酒は飲んでも、のまれるな──飲みすぎには注意が必要でしょう。
しかし、お酒によって人が変わるというのは、誰にでも当てはまることではありません。米ミズーリ大学のウィノグラードらが行った研究(2017年)によれば、お酒を飲んでも人間の性格はさほど変わらず、唯一変化があるのは「外向性」のみだとされています。
この実験は、156人の男女を対象に、お酒を飲んでいないシラフの状態と、お酒(ウオッカのソーダ割り)を飲んだ状態とを比較する形で行われました。
事前に、「自分はどんな性格で、お酒を飲むとどのように変わるのか?」というアンケートを実施し、その後、実際にお酒を飲んでもらったそうです。
なお、アンケートは「ビッグファイブ」と呼ばれる有名な性格特性モデルをもとに作成されており、具体的には、「神経症傾向」「外向性」「協調性」「経験・知性への開放性」「誠実さ」がわかるようになっていました。個人の性格は、これら5つの因子によって構成されているとされています。
さて、被験者たちにはどんな変化が表れたのか? 実験では血中アルコール濃度が0.09%になるように作られたウオッカのソーダ割りを飲んだといいます。0.09%というのは、ほろ酔い期(血中アルコール濃度0.05%以上)と酩酊初期(同0.11~0.15%)の中間くらいの酒量です。500ミリリットルの缶ビールを2本ほど飲んでいる状態と考えていいでしょう。ほろ酔い期で運転事故の可能性は2倍になるといわれていますから、0.09%はなかなかの酔い加減です。
被験者たちがこの状態になった上で、彼らの特定の行動や性格の特徴を観察するため、(「外向性」や「協調性」といったビッグファイブが浮き彫りになるような)アクティビティーを課しました。そして、その活動状況を見たウィノグラードらとシラフの被験者たちが点数をつけることで、酔った被験者たちが事前に自己申告したお酒による変化と、どのような差異が生じるかを検証したというわけです。
その結果、多少「外向性」が増加した程度で、他の4つの因子においてはあまり変化が見られなかったそうです。自己申告では誠実さや協調性が低下すると報告していた被験者でさえ、はたから見れば実際にはさほど変化はなく、飲む前と飲んだ後では「ほとんど同じ」ということがわかったのです。
私たちは、アルコール摂取によって自分のキャラクターが変わると思いがちです。しかし他人から見れば、そんなに変わらないのです(泥酔状態になればキャラクターは変わるでしょうが、そんな飲み方は、そもそも論外です!)。「私はお酒を飲むと〇〇になるから」は、案外、あてにならないということも覚えておきましょう。
◆本コラム待望の書籍化!
「『不安』があなたを強くする 逆説のストレス対処法」
堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円)
科学が証明!ストレス解消法