高齢者の正しいクスリとの付き合い方

個々の不眠症の特徴を把握したうえでクスリを選択する

写真はイメージ

 メラトニンはいわゆる体内時計の調節に関係している物質です。「メラトニン受容体作動薬」といわれるクスリは、このメラトニンの役割の代わりをすることで体内時計を調節し、生活リズムを整えて睡眠効果を発揮します。ただ、あくまで体内時計の調節が目的であるため、「眠れないときに使うクスリ」というよりは、「使っているうちに眠れるようになるクスリ」というイメージが正しいでしょう。そのため、毎日服用し続けることが重要なクスリとなります。

 オレキシンは覚醒や食欲などを制御している物質です。眠りの浅いレム睡眠のときにオレキシンの効果が出てしまうと、中途覚醒や早朝覚醒の原因となります。「オレキシン受容体拮抗薬」といわれるクスリは、オレキシンが効果を発揮しないように受容体(オレキシンが引っ付くところ)を邪魔することで睡眠効果を発揮します。

 オレキシン受容体拮抗薬を使ってクスリの力で覚醒しないようにすると、必然的にレム睡眠の状態が多くなります。そのため、こういったクスリの副作用のひとつに「悪夢」があります。楽しい夢であれば副作用でもなんでもないと思うのですが、クスリの説明書にはあえて「悪夢」と書かれているのです。人それぞれ見る夢は違いますが、いったいどんな夢を見るのでしょう? また、オレキシン受容体拮抗薬は比較的効果が長いため、翌朝以降に眠気が残ってしまうケースもあります。

 いずれにしても、個々の不眠症の特徴をしっかり把握したうえで、どのクスリを選択するかを決めなければいけないということです。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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