認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

認知症だと思っていたら別の病気だった…医師の大半が経験

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 急ぎ、大学病院の脳神経内科の予約を取った女性。検査の結果、慢性硬膜下血腫がわかりました。慢性硬膜下血腫は、局所麻酔で頭蓋骨に小さな穴を開け、血腫を洗浄するという、比較的簡単な手術で治療が行われます。たいていの患者さんは、この治療で症状が改善します。

 慢性硬膜下血腫は、前述の通り、頭部の打撲などが原因になります。一般的に高齢者はバランス感覚の低下や足腰の弱さで転倒しやすい。薬の影響で転倒しやすくなっていることもあります。ゆえに、慢性硬膜下血腫も起こしやすい。打撲の程度が軽くても慢性硬膜下血腫のリスクはありますし、本人の体は元気であっても、「慢性硬膜下血腫を起こしていない」とは言い切れません。

 慢性硬膜下血腫は「治る認知症」ではありますが、治療がされなかった間にADL(日常生活動作)が低下してしまい、自活が難しくなる場合もあります。早めの検査、治療が肝要です。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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